コラム:日本はホルモン補充療法(HRT)後進国?

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更年期障害の治療方法のひとつとして、近年注目されている「ホルモン補充療法(HRT)」をご存知でしょうか?

女性は閉経が近くなると、女性ホルモンの代表である「エストロゲン」が急激に低下し、心身に様々なトラブルを引き起こします。この症状を一般的に更年期障害と呼びます。

更年期の急激なエストロゲン(女性ホルモン)低下に対して、もともと女性の体内に存在しているホルモンを補充することで、更年期の症状改善や体の変化を根本から治療する方法が「ホルモン補充療法(HRT)」です。

日本と世界のホルモン補充療法(HRT)普及率

ホルモン補充療法(HRT)は、欧米や北欧を中心に世界でも安全性と有効性の高い治療法として15年〜20年の実績を持ち、多くの女性がホルモン補充療法(HRT)を受けています。

主にオーストラリアでは約60%、アメリカやカナダでは約40%もの普及率を誇ります。しかし、日本ではわずか約1.5%と、先進国の中では最も低い普及率にとどまっています。

日本の普及率は、なぜこれほどまでに低いのか?

日本におけるホルモン補充療法(HRT)の普及率の低さを紐解くには、 1991年ごろからアメリカで行われた、WHI(Woman’s Health Initiative)という大規模な研究を振り返ると明らかになります。

このWHIという研究では、閉経を迎えた50〜70歳の女性約1万6000人を対象に、生活習慣と心血管系疾患やがんの発症との関連が調べられました。
また2002年には、この調査の中間報告として、ホルモン補充療法(HRT)を5年以上続けていると、乳がんなどの発症リスクが高まると報告されました。

その報告当時の日本でも新聞などで大きく取り上げられ、「ホルモン補充療法(HRT)を続けていると乳がんになる」という、ホルモン補充療法(HRT)への不安が女性たちに広がり、使用が減少していきました。

しかしその後、実は研究対象となった約1万6000人の女性達は、喫煙率50%、高い肥満率と高血圧率といった、最初から乳がんや心筋梗塞などのリスクが高い人ばかりだったという問題が発覚しました。

それにも関わらず日本では、この問題の発覚前の中間報告だけが大きく報道されてしまったため、日本におけるホルモン補充療法(HRT)普及率が、いまなお低い状態が続いている可能性が高いといえそうです。

ホルモン補充療法(HRT)で気をつけるべきこととは?

現在は、ホルモン補充療法(HRT)の使用によって乳がんを発症するリスクは非常にわずかとされ、また5年未満の使用であれば乳がんリスクは増加しないことが世界的な共通認識とされています。
正しい知識のもと治療を受ければ、更年期障害の症状を改善する治療法としてホルモン補充療法(HRT)は非常に有効な手段といえるでしょう。

なお、既に乳がんや子宮体がんなどを患っている方は、病気を悪化させる恐れがあり、ホルモン補充療法(HRT)を受けることはできないため、注意が必要です。

更年期障害の治療法は、ホルモン補充療法(HRT)のほかにも漢方薬や向精神薬などがありますので、ご自身の体に合わせて、医師とよく相談のうえ決定しましょう。

当院では、院長が「ホルモン補充療法(HRT)のガイドライン」の作成委員のメンバーですので、更年期障害にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。