10代から20代の若い女性のあいだで、性感染症(sexual transmitted disease:STD)が増加しています。
STDの対処方法として一番大切なのは、その予防と早期治療を行うことです。
治療が遅れるほど、それだけ症状が悪化し、将来の妊娠・出産にまで影響することがあります。
症状がすぐに表れないSTDもありますので、若いうちから定期的に検査をすることをお勧めします。

主な性感染症(STD)の種類

クラミジア感染症(咽頭感染も含む)

  • 感染してから症状がでるまで:最短で1〜4週間程度、長い間潜伏することもある
  • 治療期間:1回の内服で済むものから2週間くらい内服するものもあり

感染すると、男性は尿道にむずがゆさを感じる(尿道炎の症状)ことがあり出ます。
女性は卵管炎・子宮頚管炎から腹痛を起こしやすくなるものの、症状が特になく感染に気づかないケースが多いようです。
感染したまま妊娠すると、初期には流産、また産道感染により新生児肺炎や新生児結膜炎を起こす可能性があります。
放置することは大変危険であり、不妊症や子宮外妊娠を誘発する可能性もあるため早目に検査をしましょう。
通常はクラミジアに効果のある抗菌剤を服用すると治りますが、パートナーに症状がある場合は同時に治療することが大切です。

淋病、淋菌感染症(咽頭感染も含む)

  • 感染してから症状が出るまで:約2〜7日程度
  • 治療期間:最低1週間

オーラルセックスによってうつることが多いSTDです。
感染すると男性の場合、数日の潜伏期間を経て排尿の際に痛みが走り、濃い黄色の膿が出ます。放置すると病気が進行し、淋菌性精巣上体炎や淋菌性前立腺炎を起こし不妊症の原因となる場合もあります。
女性は感染から数日後におりものが多くなりますが、通常は痛みを感じることがありません。感染に気がつきにくく、炎症がひどくなる傾向がありますので注意してください。
分娩の際、母体が淋菌に感染していた場合、母子感染を起こします。
抗生物質による治療と中心となりますが、耐性菌が出やすいため完治するまで医師の指示に従って服薬してください。

尖圭(せんけい)コンジローマ

  • 感染してから症状が出るまで:1ヶ月〜1年程度
  • 治療期間:症状によって異なる

尖圭コンジローマは、性器や肛門のまわりにイボ状のできものができるSTDです。ヒト・パピローマ・ウイルスに感染して発症し、先の尖ったイボを形成します。
男性の場合は亀頭や肛門の周辺にイボができ、小さな腫瘤が成長してカリフラワー状になることもあります。
自覚症状がない場合が多いのですが、性器にかゆみや痛みを感じることで気付くこともあります。
治療方法は、電気メスなどによる焼却やコンジローマ用の軟膏の塗布がありますが、他の部位への接触転移が多く再発を繰り返すことが多いのが特徴です。

トリコモナス腟膣炎

  • 感染してから症状が出るまで:1〜3週間程度
  • 治療期間:最低1〜2週間

トリコモナスは、トリコモナス原虫の感染によって発症するSTDです。性行為により感染し拡大することが多く、性行為以外では浴場、プール、濡れたタオルやトイレの便座などからも感染することがあります。
女性の場合、感染してから4日〜1ヶ月弱の潜伏期間後外陰部にかゆみや熱感があったり、おりものが増えたりします。泡立ち、悪臭のあるおりものが特徴です。
男性の場合は排尿時に軽い痛みをともないますが、排尿痛、痒み、尿道から膿のようなものがでることもあります。
治療には内服薬を使いますが、症状が治まったとしても原虫が死滅するまで治療を続けてください。感染率の高い病気ですが、コンドームの使用により蔓延を阻止できると言われています。ただしパートナーが治さない限り、再発を繰り返しますので治療は一緒に行ないます。

カンジダ腟膣炎

  • 感染してから症状が出るまで:早ければ7日くらい
  • 治療期間:最低1週間

カンジダ腟炎は、体内にも存在するカビ(真菌)の一種で発症します。他のSTDとは異なり、ストレスなどの体調の変化、抗生物質の内服などによっても発症することがある病気ですので、必ずしもSTDとは言えない面があります。カッテージチーズ状のおりものが出てかゆみがあれば、発症のサインと言えます。
カンジダは女性の方が発症する確率が高く、外陰部が赤く腫れ、激しいかゆみを伴いただれて出血することもあります。
過労、ストレス、体調の悪化や免疫力が低下すると、カンジダ菌が繁殖しやすくなります。
男性の場合は、強い痒みやドロッとした白い液状のもの、塊状のおりものが亀頭から分泌物として出てきます。
発症した場合、清潔と安静を保ち刺激性の強い石鹸の使用を止めます。
通気性の良い下着を着用、治るまで性交渉をさけることが大切です。

腟洗浄や抗真菌剤の腟内挿入および軟膏の塗布で治療します。

性器ヘルペス

  • 潜伏期間:2日〜1週間程度
  • 治療期間:症状によって異なる(何度でも再発する可能性もあり)

ヘルペスの病変部と接触することにより発症するSTDです。
オーラルセックスが原因のI型、性行為による感染をⅡ型と分けます。
男女ともに性器に小さな水泡が多数でき、激しい痛みとかゆみが続きます。水泡はしばらくすると潰れ、潰瘍上になり激しい痛みと神経痛を伴います。
患部近くは神経麻痺を起こし、排便障害、排尿障害などの機能障害を来すこともあります。
分娩時に産道でヘルペスのウイルスに感染をすると、ウイルスが新生児の全身に広がり皮膚や脳に感染する恐れがあります。重い場合は、後遺症が残ったり死亡したりします。
検査方法ですが、細胞を採取して検査いたします。
治療は、抗ウイルス剤の外用薬や経口薬が中心ですが、重症の場合は点滴により治療が行われます。

梅毒(第1期・第2期)

  • 感染してから症状が出るまで:3ヶ月〜10年
  • 治療期間:2〜3ヶ月程度

皮膚や粘膜の小さな傷から、トレポネーマという病原菌が侵入することで発症するSTDです。放置すると子孫にも深刻な影響を及ぼすため、古くから世界中に広く分布しています。粘膜の接触で感染するため、感染経路は限られています。近年再び増加傾向にあると言われています。
梅毒は、1期からⅣ期まで病気の進行ステージが分類されています。

1期
2〜3週間の潜伏期後に大豆のような大きさの硬いしこりができます。
女性の場合は外陰部に、男性の場合は陰茎に出来ますがこの時に痛みはありません。
6週間を過ぎると、しこりは崩れ硬性下疳と呼ばれる潰瘍になり病気だけ潜伏します。
Ⅱ期
感染から9週間、長ければ3年のうちに症状が現れ発熱・頭痛・倦怠感・リンパ腫の腫れなどがあり、全身に小さな赤い斑点の皮疹が現れます。
何度も再発と消滅を繰り返し、口・乳房・陰部にまで皮疹が現れます。
Ⅲ期
感染から3年を経過すると、ゴム腫と呼ばれるシコリができます。
骨・心臓血管系・内臓・中枢神経が冒されはじめ、脳が冒されてしまうと認知症の症状が発症、または大動脈瘤になることもあります。
Ⅳ期
感染から10年以上経過した状態をいいます。
今までとは違い、症状が皮膚には現れません。
身体の内側全てが冒され、歩くことはもちろん日常生活を送ることも難しくなり、最後は死に至ります。
第4期までくると治療をしても完全に治すことは不可能です。現在は抗生物質が開発されているので、早い段階で治療しますとこのように症状が進むことは稀です。

男女とも症状が出ないタイプがあり、この場合は専用の血液検査で判明することが多いようです。

B型肝炎

  • 感染してから症状が出るまで:1〜6ヶ月程度
  • 治療期間:2〜3ヶ月程度

B型肝炎ウィルスの感染によって発症します。全世界で3億5,000万人が感染していると言われており、今はワクチンによって予防できるSTDです。
発病の初期は体がだるく、吐き気や頭痛、尿の色が濃くなるなどの症状が出ます。
全身に黄疸が出るようであれば入院が必要で、尿は更に濃褐色になり、醤油のような色になります。ただし現在は、輸血による感染は年間10例ほどです。
子供への感染は母子感染が一般的であり、大人への感染はパートナーとの性交渉の際に起きることが多いです。
自分自身の感染を知らずに、気付かないうちに感染を拡大しているケースもあります。