妊娠中は、つわりや体型の急激な変化によって様々な不快症状が現れやすいものですが、「日本の国民病」ともいわれる肩こりもその一つです。
しかし、非妊娠時と同じ対処ができないことも多く、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、妊娠中の肩こりの原因や対策、注意点について解説します。

妊娠中の肩こりの原因

肩こりの主な原因は血行不良や筋肉の緊張ですが、妊娠中は次のような理由から、肩がこってしまう傾向があります。

ホルモンバランスの乱れ

妊娠を継続するために妊娠中は女性ホルモンが通常より多く分泌されますが、これによりホルモンバランスが乱れ、血行を促す自律神経の働きも一時的に低下してしまいます。このため、血液が十分に巡らず肩がこりやすくなってしまうのです。

ストレス

妊娠中はつわりによる体調不良や出産に対する不安、各種行動の制限などにより普段以上にストレスを感じやすくなりますが、このストレスによって体が緊張状態となるため、肩がこりやすくなってしまいます。

姿勢や運動不足

お腹がある程度大きくなると思うように体が動かせず、血行不良になってしまうことがあります。また、姿勢を自由に取れなくなるなどの体の動きの制限も肩こりを招く原因になります。

非妊娠時であれば上記のような場合であってもマッサージ店で施術を受けたり、薬を使ったりできますが、妊娠中は非妊娠時と同じ対処ができないことが多く、特に妊娠中の薬剤の使用は医師の指導・処方がない限りは避けるのが原則です。したがって薬に頼らず、無理のない方法で肩こり対策をする必要があります。

妊娠中の肩こり解消に効果的な対策とは?

肩こりはあくまで肩周辺の筋肉の問題であるため、赤ちゃんや母体に深刻な影響を及ぼすことはありません。
しかし、肩こりが続くと頭痛や吐き気の症状が現れて妊娠時の体調不良に拍車をかけてしまうこともあるため、妊娠中でも実践できる次のような肩こり対策がおすすめです。

軽いストレッチ

ストレッチは非妊娠時・妊娠中のどちらでも気軽にできる肩こり対策の一つです。体が温まっているお風呂上りや仕事の休憩時間などに肩や首、腕、肩甲骨の筋肉を軽く伸ばしてみましょう。
ただし、お腹のふくらみが目立ち始めている場合は、お腹や腰に負担をかけないストレッチを選んでください。
ストレッチの仕方がわからない場合はインターネットで解説付きの実演動画を探すのもおすすめです。妊婦さん向けのストレッチ動画はとても役に立ちます。

軽い運動

肩こりの原因である血行不良は軽い運動をすることで改善が期待できます。ウォーキングや妊婦さん向けの軽いエクササイズが最適ですが、必ず無理のない範囲で行ってください。
諸事情により運動が制限されている場合は、血行促進効果がある磁気治療器や磁気ネックレスを使うのも良いでしょう。磁気は胎児に悪影響を及ぼしませんが、妊娠初期の方は念のため医師に相談することをおすすめします。

体を温める

体を温めることも肩こり解消には有効です。ホットタオルやカイロで肩や首、肩甲骨を温めると筋肉がほぐれていくのがわかるでしょう。特に気温が下がる冬や慢性的な冷え性の方にはぜひ実践していただきたい方法です。
お風呂にゆっくり浸かるのも良い方法ですが、のぼせによる転倒などの事故を防ぐためにも長時間の入浴は控えましょう。

寝る姿勢・寝具の見直し

就寝時の姿勢を見直すことも肩こり解消につながります。どのような姿勢でも寝られるようであれば肩に負担のかからない仰向けがおすすめですが、しっくりこない場合は無理して仰向けで寝る必要はありません。
横向きで寝たい方は肩や腰、お腹にかかる負担を軽減できる抱き枕を使うのも得策です。

妊娠中の肩こり対策における注意点

妊娠中はお腹のふくらみと比例して肩こりも悪化しやすく、元々肩こり持ちの妊婦さんにとっては少々つらい時期となってしまいますが、どのような状況であっても次の点は守って肩こり対策をしてください。

薬は安易に使わない

非妊娠時であれば市販の鎮痛薬を服用して一時的に肩こりを解消できますが、妊娠中はどのような薬であっても安易に使用しないようにしましょう。
患部に貼る湿布薬であっても、そのほとんどが妊婦さんの使用が禁止されています。肩こりで日常生活に支障が出るようであれば、まずは医師に相談してください。

マッサージ店の利用は医師に相談の上、安定期に入ってから

妊娠中にマッサージで肩をほぐしたい場合は医師に相談の上、安定期に入ってから受けましょう。
その際は、マタニティマッサージのメニューがあるお店を選ぶのがベストです。

妊娠中の肩こり対策は無理せず、少しずつ実践を

妊娠中の肩こり対策としてできることには限りがありますが、今回ご紹介した対策を少しずつ実践していけば、つらい肩こりもだいぶ楽になります。肩こりでお悩みの妊婦さんはぜひ生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
しかし、それでも肩こりが改善されず、日常生活に支障が出るようであれば無理をせず、医師の診察を受けましょう。

当院でも、妊娠中の肩こりに関するアドバイスや指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。