更年期うつとは? 症状や初期サイン、対処法について

40代半ばを過ぎてから、「最近やる気が起きない」「なんだか涙が止まらない」というような変化を感じている場合、それは更年期障害の一つである「更年期うつ」の可能性があります。
特に内面の不調は見えない分だけ周囲にも伝わりづらく、一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。
更年期うつの初期サイン
更年期障害によるうつ症状の初期段階では、自身でも気づきにくい微妙な変化が現れます。
例えば、これまで気にならなかった小さなことにイライラしたり、急に気分が沈んだりするなどです。普段は楽しめていた趣味が急に面倒に感じ、何をしても楽しく感じられなくなるようなケースもあります。
また、集中力が続かなくなったり、仕事や家事で些細なミスが増えたりといった変化が出る人もいます。これらは疲れや加齢による体力の低下だと見過ごされがちですが、更年期うつのサインの可能性があるのです。
さらに、睡眠に関する問題も初期サインとしてよく見られ、夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪い、朝早く目が覚めてしまうなどの症状や、動悸や息切れ、ほてりや発汗といった身体症状が現れる場合があります。
更年期うつの原因
更年期うつの主な原因は、体内でのホルモンバランスの変化にあります。
特に女性の場合、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの急激な減少が心身に大きな影響を及ぼします。
このホルモンは、感情やストレスをコントロールする脳の働きにも関わっているため、心のバランスが崩れやすくなるのです。
エストロゲンが減ると脳内のセロトニンやドーパミンといった、通称「幸せホルモン」と呼ばれるものの分泌が低下し、気分が落ち込みやすくなったり、不安を感じやすくなったりします。
また、エストロゲンの減少による自律神経の乱れが加わると、睡眠障害や体調不良が起こりやすくなり、これがさらなる心の負担となります。
加齢による体力の低下や見た目の変化に対して、「自分が老いていく」という感覚が心理的な負担となって、自信喪失や無力感につながる場合もあるでしょう。
さらに、子育てが終わるタイミングや親の介護が始まるタイミングと重なることが多く、家庭での役割の変化も原因の一つとして考えられます。
更年期うつの診断方法
更年期うつを診断してもらうためには、まず専門医による問診が必要です。
症状がどのような形で現れているのか、いつ頃から感じ始めたのか、また日常生活にどのような影響を及ぼしているのかを伝えましょう。
医師からは、主に体調や気分の変化、月経の状況や、睡眠の質や食欲の変化、日常生活でのストレスの状況の有無などを聞かれ、身体の症状(例えばほてりや発汗、動悸など)があるかどうかを確認されます。
医師はこうした情報をもとに、更年期障害によるものかどうかを判断します。
例えば、更年期障害によるものではなく、精神的な疾患(うつ病や不安障害)が原因だという可能性もあるため、うつ症状が更年期によるものなのか、他の原因によるものなのかを明らかにする必要があるのです。
更年期うつの治療法
更年期うつには、様々な治療法が用意されており、症状の程度や個々の体質、生活環境に合わせて選択されます。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法は、更年期障害特有のホルモンバランスの乱れを整えるための治療法です。
エストロゲンを中心に、必要に応じてプロゲステロンも併用して体内に補充するもので、ほてりや発汗、動悸、不眠などの症状改善だけでなく、うつ症状の緩和につながる場合があります。
ホルモン補充療法のメリットは、更年期障害そのものの根本的な原因にアプローチできる点です。ただし、人によっては副作用が出る可能性があるため、医師と十分に相談しながら進めましょう。
抗うつ薬
更年期うつではなく、明らかな「うつ病」だと診断された場合は、抗うつ薬などが処方されます。
抗うつ薬は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを調整し、気分を安定させる効果がある薬です。
抗うつ薬の特徴は、短期間で効果を実感しやすい点ですが、飲み始めに軽い眠気や胃に不快感が生じる人もいますので、担当医と良く相談して慎重に服薬していくことが大切です。
カウンセリング
カウンセリングは、心のサポートを中心とした治療法です。
特に更年期に伴う不安感や孤独感、ストレスが原因でうつ症状が出ている場合、専門のカウンセラーとの対話が大きな助けになるでしょう。
カウンセリングでは、自身の気持ちを言葉にすることで心の整理がつき、新しい視点から状況を見つめ直せます。ただし、産婦人科で正式なカウンセリングまで行うところは少ないので、希望される場合は、どこで行えるかよく相談をして下さい。
その他の補完療法
上記の治療に加えて、運動療法や食事改善といった生活習慣の見直しも効果的です。
軽いウォーキングやヨガを日常に取り入れると、自律神経のバランスを整えられ、心身ともにリフレッシュできます。
また、ビタミンやミネラルが豊富な食事を心がけると、体全体の健康をサポートできるでしょう。
ストレス管理としては、無理をしないことが基本です。
家事や仕事など、できる範囲で優先順位をつけて取り組めば、自分を追い詰める状況を避けられます。
周囲のサポートを得ながら対処しよう
更年期の心や身体の変化は避けられないものですが、正しく理解して適切に対処すれば、日常生活を快適に過ごせるでしょう。
最も大切なのは、一人で抱え込まないことです。
症状に悩んでいる場合は、家族や友人に気持ちを話したり、医師やカウンセラーに相談したりして、対処法を見つけていきましょう。
当院でも、更年期の不調や更年期障害の治療に関するアドバイス・指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。