避妊だけではないピルの効能

2020.09.22

ピルは、世界で1億人の女性が飲んでいるといわれている女性ホルモンの一種です。

実は、世界中で最も服用者数が多い薬であり、先進国になればなるほど服用率が高くなっていますが、日本での服用率は国内全体の2%弱といわれています。先進国の中では非常に低い服用率です。

日本でのピルは「避妊薬」というイメージが根強く残っていますが、ピルは避妊薬としての効果以外にも、生理痛や生理不順、にきびの治療などにも効果があり、適切に使用すると日常生活においてメリットの多い薬です。

ピルとは? 確実な避妊を可能にするピルの効能

ピルは、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲストーゲン(黄体ホルモン)」という女性の卵巣で作られているホルモンが少量ずつ含まれている錠剤です。
ピルは初潮を迎えた思春期の頃から使用することができます。

ピルを避妊目的で服用する場合、服用方法を正しく守ればコンドームよりも確実に避妊することが可能です。

ピルを服用すると、2つのホルモンが体内の「脳下垂体」に働きかけます。すると脳は「妊娠した」と感知し、排卵を促す際に必要なホルモンの分泌を抑制します。排卵が止まることで、確実に避妊できるという仕組みです。
ピルの服用をやめると脳下垂体は再び卵巣に排卵を促し、妊娠も可能になります。

現在、世界中で主流となっているピルは、ホルモンの量が少なく副作用リスクの低い「低用量ピル」です。
日本では1999年に解禁されましたが、市販薬ではないため、医師の処方箋が必要です。

女性のがんの予防に?! 避妊だけじゃないピルの効能

ピルによって体内のホルモンバランスが整うことで、避妊のほかにもさまざまな効能が期待できます。

生理の時期をコントロール

ピルを処方通りに服用していると規則正しく生理がくるため、生理不順の改善になります。また、旅行や大切な用事に合わせて、生理日をずらすこともできます。
薬を飲むタイミングを変えるだけで、生理の時期をコントロールすることができます。

子宮系疾患の諸症状軽減

子宮内膜症や子宮筋腫などの痛みや経血を、ピルを服用することで軽減させることが可能です。

卵巣がんや子宮がんの予防

ピルの排卵を抑える作用により、卵巣を良好な状態に保てるため、卵巣がんや良性卵巣腫瘍にかかりにくくなるというデータもあります。
また、ピルに含まれている黄体ホルモンが子宮内膜を保護するため、子宮体がんの予防につながります。
ほかに、卵巣のう腫や乳腺症などの女性特有の病気の予防に効果があるともいわれています。さらに男性ホルモンを抑える作用があるため、にきびを改善する効果もあります。

正しいピルの服用方法

女性にとってメリットの多いピルですが、効果をしっかりと引き出すためには、正しい服用方法を守る必要があります。

ピルは基本的には4週間を1サイクルとして毎日服用します。
生理の初日から飲み始め、できるだけ同じ時間に1錠ずつ飲む必要があります。3週間ピルを飲み続け、残る1週間は服用をお休みします。(処方されるピルの中には、この残りの1週間は偽薬を飲み、飲む習慣を途切れさせないものもあります。)

ピルを服用していない期間に、排卵のない「無排卵月経」が起こります。これを1サイクルとして、必要な期間繰り返し服用していきます。

ピルは避妊目的のほかに、日々の仕事や大切な用事などに万全な体調で臨むために生理をコントロールする有効な手段です。
しかし、薬であるためにいくつかの副作用、特に血栓症のリスクには十分注意が必要です。

ピルは自分の体や生活スタイルを把握した上で、医師によく相談してから服用を検討してください。