不妊症かもしれないと思ったら? 不妊の原因や検査、治療について

2024.03.04

「不妊」の問題は10組に1組の夫婦が直面しているといわれており、現代社会において身近な悩みとなっています。
不妊の悩みに対して、孤独や不安、罪悪感、ストレスを感じる方が多いようですが、決して夫婦だけで抱えずに早めの医療機関の受診や、カウンセリングに頼ることが賢明です。

不妊とは

「不妊」とは性交渉を行っているにも関わらず、一定期間内(1年が目安)に妊娠に至らない状態を指し、この定義は多くの医療機関や専門家によって広く認められています。

不妊は「絶対に妊娠ができない」という意味だけでなく、「妊娠するのが困難である」という広い意味を持ち、不妊で悩んでいる夫婦でも適切な治療や時間を経て、子供を授かる場合も少なくありません。

不妊の原因は?

不妊の原因は多岐にわたります。性別に関係なく男女のどちらにも原因がある可能性があり、個々の健康状態やライフスタイルによっても大きく異なります。

女性側の原因について

排卵の障害

女性の最も一般的な不妊の原因が「排卵障害」で、卵巣が正常に卵子を放出しない状態を指します。多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺機能障害、高プロラクチン血症などで引き起こされることが多いです。

子宮や卵管、卵巣の異常

子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮の形態異常、卵管の閉塞が原因であることも考えられます。これが原因で卵管が損傷を受け、卵子と精子の出会いや受精卵の着床が妨げられている可能性があるのです。
また卵巣が早期に機能を停止し、卵子の数や質が大幅に減少したり、早期閉経に至ったりする早期卵巣不全という状態が原因のケースもあります。

生活習慣と環境、年齢の影響

喫煙、過度のアルコール摂取、過体重または低体重、ストレスなども不妊の原因となることがあります。
また年齢が高くなると卵子の質と量が低下し、妊娠の可能性もそれに比例して低くなるので注意が必要です。

女性が原因である不妊は、上記の原因が単独であるケースもあれば、複数が組み合わさっていることもあります。

男性側の原因について

精子の生産、精巣の機能障害

精子の量が少ない(乏精子症)、全くない(無精子症)、精子の形や運動性に問題がある(奇形精子症)ことが一般的です。
また精巣が正常に働かず、十分な精子を生産できない精巣の異常の可能性もあり、遺伝的条件、先天的な問題、あるいは感染症や怪我によって発生する場合があります。

射精や精管の問題

射精障害は、主に逆行性射精(精子が膀胱に戻る)や射精不全(射精が弱いまたは全くない)に分類され、糖尿病、脊髄損傷、手術の後遺症によって起こる可能性が高いです。
また感染症や先天性の問題などによって精管が閉塞している場合は、精子を外部に出すことができません。

ホルモン異常や生活習慣、環境要因

甲状腺機能障害や副腎疾患が原因で起きるテストステロンなどの男性ホルモンの不均衡も、精子の生産に影響を与えることがあります。
また女性の原因と同様に喫煙、過度のアルコール摂取、過体重、ストレスなどが精子に悪影響を与え、高齢化と共に精子の質と運動性が低下することも知られています。

このほかには稀に明確な医学的原因が見つからない「原因不明の不妊症」と診断されることもあります。

不妊症の検査や治療

不妊の原因を特定するためには男女共に詳細な医療検査が必要となり、「不妊症」と診断された際はその結果に基づいて適切な治療法が選択されます。

検査について

女性の場合は、血液検査でのホルモンレベルの調査、超音波検査での子宮や卵巣の状態、子宮卵管造影を通じた子宮と卵管の通り道の検査、内診による子宮の形状やサイズの確認があります。

男性では、精液分析による精子の数や運動性、血液検査でのホルモン異常の有無の確認、超音波検査による精巣の検査が行われます。

治療について

不妊症の治療は、患者の年齢、不妊の原因、治療への反応、個人的な願望や財政状況に基づいて慎重に選択されます。
治療法は、薬物療法、手術、生殖補助医療、ライフスタイルの改善が主です。
薬物療法には、排卵を促す排卵誘発薬の使用、ホルモンバランスを整えるためのホルモン治療があります。
女性の手術には子宮内膜症による組織の除去、卵管の閉塞を改善するものがあり、男性の場合は精管の閉塞を解消する精路再建手術などがあります。
生殖補助医療は主に体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、凍結胚移植があり、特に複雑な不妊のケースにおいて有効です。

また、健康的な食生活や運動、ストレス管理、禁煙や禁酒といったライフスタイルの改善も効果を高める要素で、心理的サポートやカウンセリングも不妊治療を乗り越える手助けとなります。

問題を抱え込まずに医療機関に相談しよう

不妊は多くの治療法が利用できるため、まずは医療検査で原因を特定し、適切な治療を受けることで子供を授かる可能性があります。ただし、その治療の内容によっては、一般の婦人科ではなく、生殖医療専門の婦人科で行うものがあります。そういう医療機関では、心理的サポートやカウンセリングも行われているので、不妊の問題は夫婦だけで抱え込まず、早めに医療機関を受診しましょう。

当院でも、一般的な妊娠に関するアドバイス・指導を行なっています。また必要に応じて生殖医療専門の婦人科へご紹介致します。ぜひお気軽にご相談ください。