更年期に糖尿病発症リスクが上昇する理由と予防対策について
更年期の病気といえば、ほてりや頭痛、不眠、易疲労感、気分の落ち込み、お肌の乾燥などの更年期障害ばかりに注目が集まりがちですが、実は同時に生活習慣病を発症しやすい時期でもあります。
高血糖の血液が流れることで血管が大きなダメージを受ける糖尿病はその代表的な例で、更年期世代であれば体型や既往歴にかかわらず注意が必要です。
また、糖尿病の初期症状は更年期障害の諸症状と類似することもあり、「更年期障害だと思っていたら実は糖尿病だった」という例もあります。
更年期に糖尿病発症リスクが上昇する理由とは?
生活習慣病の代表格として挙げられることの多い糖尿病。
豊かで便利な生活になるほど患者さんが増加していく傾向にあるのは、やはり「動かないライフスタイル」と「高カロリーな食事やお酒」が糖尿病発症の引き金であることを物語っています。
経済的に自立し、自由に外食できるようになってから健康診断で高血糖を指摘された方も多いのではないでしょうか。
つまり、社会人デビューは糖尿病発症リスクが上昇する最初の時期なのですが、次のリスク上昇期はいつだと思われますか?
答えは更年期(中高年)なのです。
更年期は20代・30代の頃と比べて健康に気を使い始める時期のはずですが、それでも糖尿病のリスクが高まってしまうのには更年期特有の健康事情が背景にあります。
更年期の糖尿病リスク上昇の一因は「エストロゲンの減少」にあり
周知の通り、更年期には女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が急激に減少します。
このうち、エストロゲンには血糖値を下げるインスリンの働きをサポートする作用がありますが、エストロゲンの量が減ればインスリンの働きも弱くなるため、血糖値が下がりにくくなります。
これが、更年期の糖尿病発症リスク上昇の一因なのです。
更年期世代は体型にかかわらず糖尿病に注意を!
したがって、できればエストロゲンの減少を食い止めたいところですが、どんなに努力をしても、エストロゲンの減少は加齢とともに加速していきます。
ですから、更年期を迎える年齢になれば、今まで健康に問題がなかった方でも糖尿病になるリスクが上がりますし、食べ過ぎや運動不足など普段の生活習慣に心当たりがある方は一層リスクが高まると認識すべきでしょう。
更年期障害と糖尿病の症状は酷似 判断を誤ると治療が遅れることも
糖尿病に対しては長年、「贅沢・肥満の病」というイメージがついてまわっていました。(実際は肥満体型でなくても糖尿病になることがあります)
そのため、現在でも「比較的スリムな私には関係ない」と考えている女性は多いのですが、更年期の体調不良で医療機関を受診した結果、実は糖尿病の初期症状だったという例は珍しくありません。
というのも、更年期障害と糖尿病は症状が酷似しているので見分けるのが難しいのです。
たとえば、更年期にはほてり、喉の渇き、頭痛、イライラ、頻尿などの症状がよく見られますが、これは初期の糖尿病でもよく見られる症状であり、専門家以外の方が見分けるのは至難の技。
だからこそ、更年期世代はご自身の体調を過信せず、生活習慣病のリスクを常に意識していただきたいのです。
糖尿病とは無縁だと思い込んだ結果、治療が遅れてしまうような事態を避けるためにも、更年期に差し掛かる頃から少しずつ生活習慣病予防対策を実践していきましょう。
更年期に実践したい糖尿病予防対策
生活習慣病は、その名の通り生活習慣に起因する病気なので、予防対策も生活習慣の見直し・改善が基礎になります。
糖分と脂質が少なめの食事を心がける
更年期には糖分と脂質を少なめにした食事に変えましょう。
ドレッシングや各種ソースはできるだけノンオイルを選び、たんぱく質はお魚や卵、大豆などから摂取。白米やパンといった多量の糖質を含む炭水化物は少なめにするなど、食事内容の見直しはそれほど難しいことではありません。
また、食事の際は野菜から食べるように心がけましょう。こうすることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。
そして、食事の時間にも注意が必要です。特に夕食の時間はなるべく早めを心がけ、夜8時頃には食べ終わっているのが理想です。
適度な運動を心がける
運動は健康維持には欠かせない習慣です。
今まで運動習慣があった方は無理しない程度に継続してください。
これといった運動習慣がなかった方はウォーキングやお散歩など簡単な運動から始めてみましょう。
まずは、1回30分程度の運動を週3回程度行います。もっと運動したい場合は毎日でも構いません。
余力がある方は1日3~5分程度の簡単な筋トレも加えてみましょう。
筋力がつくと代謝が上がり、ダイエット効果も期待できるようになります。
定期健康診断はしっかり受ける
勤務先で定期健康診断(健診)を実施している場合はパスせず、しっかり受けましょう。
この健診で生活習慣病の兆候を早めにキャッチできることがあり、生活習慣を見直す良いきっかけになります。
また、血液検査では血糖値を測定するので、異常値が出ていれば糖尿病の早期発見にもつながります。
フリーランスで働いている方や主婦の方は各自治体が実施している健診が用意されているので、「毎年◯月には健診を受ける」と決めて恒例行事にすることをおすすめします。
なお、空腹時の平均血糖値は100前後なので、このあたりの数字を目指しましょう。
体の状態に合わせた生活習慣へシフトしていくことが大切
加齢に伴う体の変化はうれしいことばかりではありません。
しかし、そのときの体の状態に合わせた生活習慣へ上手にシフトしていけば、今まで以上に健康的な生活を送れるようになることも可能なのです。
更年期は将来やってくるシニアライフの質を左右する重要なライフステージ。
今後の健康のためにも、更年期障害に対処しつつ、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを見据えた生活を心がけたいものです。
当院でも、更年期の体調や更年期障害に関するアドバイス・指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。