妊娠中に気をつけたい感染症と予防対策について

2022.04.04

感染症は普段から注意すべき病気ですが、体の免疫力が低下しやすい妊娠中は感染症にかかりやすく、かつお腹の赤ちゃんにも影響が出る恐れがあるため、予防対策をさらに徹底して行うことが重要になります。

ここでは、妊娠中に気をつけたい主な感染症と予防対策について解説していきます。

妊娠中に気をつけたい主な感染症「TORCH(トーチ)症候群」とは?

感染症のなかには、妊娠中の女性が感染するとお腹の赤ちゃんにも深刻な影響を与えてしまう可能性がある病気があります。特に気をつけたい病気をまとめて「TORCH(トーチ)症候群」と呼びます。
「TORCH(トーチ)症候群」とは、Toxoplasma(トキソプラズマ)、Rubella(風疹)、Cytomegalo (サイトメガロ)、Herpes(ヘルペス)といった病気の頭文字をつなげたものです。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫という寄生虫が人の口や目から体内に入って感染することが原因となり発症します。
通常は感染してもほとんどの人が無症状で特に問題ありませんが、妊婦さんが初めて感染してしまうとお腹の赤ちゃんも感染することがあり、早産や流産、胎児の先天異常の原因となることがあります。

トキソプラズマ原虫は加熱不十分な生肉や、動物(主に猫)のフン、土などに存在しているため、生肉は食べずにしっかり加熱処理し調理器具もよく洗う、なるべく猫のトイレ掃除やガーデニングは控える、もしも行う場合は手袋をして最後はしっかり手を洗うようにしてください。

梅毒

梅毒は性感染症の一つであり、梅毒トレポネーマという細菌に感染してリンパ節炎などさまざまな症状を引き起こす全身性疾患です。
妊婦さんは母子健康法で妊娠初期に検査することが定められているので、万が一梅毒に感染していても早期発見・治療が可能です。
ただし、妊娠初期に発見されない場合でも妊娠中に感染してしまうことがあるので注意が必要です。お腹の赤ちゃんが胎盤を通して感染してしまうと流産の原因となる恐れがあります。
また、赤ちゃんが梅毒に感染することを先天梅毒と呼び、出生後もさまざまな症状のリスクを伴いますので妊娠中の早期発見・治療が大切です。

風疹

風疹は唾液などの飛沫感染でかかる病気です。万が一妊娠中に感染してしまい、お腹の赤ちゃんも感染すると難聴や心疾患、白内障といった先天性の異常を及ぼす恐れがあります。特に妊娠初期の感染は注意が必要となります。

風疹はワクチンで防げますが妊娠中は予防接種を受けることができませんので、風疹にかかった記憶がなく接種も受けていないという方は、出来れば妊娠前に済ませておくことが大切です。
万が一の感染リスクを避けるために、パートナーやご家族も予防接種をしておくことをオススメします。
また、妊娠初期の検査で風疹の抗体が少ないあるいはないことが分かった場合は、外出時のマスクと手洗いを徹底し、なるべく人ごみへは行かないようにしましょう。

サイトメガロウイルス

サイトメガロウイルスに妊娠中に感染すると、お腹の赤ちゃんに難聴や肝機能異常をはじめとするさまざまな影響を及ぼすことがあります。
サイトメガロウイルスは日常的に存在するありふれたウイルスであり、特に乳幼児の唾液や尿が原因となって感染することが多くみられます。
そのため、小さなお子さんに接する機会が多い方は食器の共有は避けて食べ残しも食べないようにし、おむつ交換のあとなどは十分な手洗いとうがい、消毒を徹底してください。

ヘルペス

ヘルペスは性感染症の一つであり、単純ヘルペスウイルスが感染して性器やその周辺に水疱のような潰瘍などができることがある病気です。
妊婦さんが感染しても赤ちゃんにまで影響が及ぶことは稀ですが、出産時に産道感染して重い感染症を引き起こす恐れがあります。そのため、出産直前にヘルペスの感染がみられた場合は、帝王切開が適応となることがあります。

ほかにも、「クラミジア」や「水痘」、「りんご病」など、注意すべき感染症にはさまざまなものがありますので、妊娠中は医師によく相談して徹底した感染症予防を心がけましょう。

妊娠中は感染症予防・体調管理を万全にして過ごそう

妊娠中は免疫力が低下するため、感染症からご自身、そして赤ちゃんを守るために普段よりもさらに予防対策に力を入れることが重要になります。

手洗いやうがいの徹底、外出時はマスクを着用し人ごみを避けるといった感染予防対策は妊娠中でなくとも基本的なポイントですが、うがい薬など予防対策グッズの準備はもちろん、必要に応じてパートナー・ご家族のワクチン接種を検討するなど、改めて身の回りの環境を整えることも意識しておきましょう。

そして、小さなお子さんのお世話をはじめ、ペットのトイレ掃除やガーデニングの土いじりなど、普段の生活から思わぬ感染症を招く恐れもあります。
なるべくパートナー・ご家族に協力してもらうのが望ましいですが、やむを得ずご自身で行う場合は手袋などを用意し、用事が済んだあとは手洗い・うがいを必ず行うよう心がけてください。
また、睡眠不足や疲労、ストレスなど日頃の体調管理にも十分注意して生まれてくる赤ちゃんを感染症から守りましょう。

当院でも、妊娠中に注意すべき感染症や予防対策に関するアドバイスや指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。