「ミレーナ」とはどんなもの? その効果やメリット・注意点について

2022.11.24

「ミレーナ」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
子宮内避妊器具であるミレーナは、避妊手術以外の中では最も高い避妊効果があるものとされています。
また、過多月経や月経困難症の治療薬としても活用され、肥満、喫煙、高血圧、ピルの副作用などの体質によって低用量ピルを服用できない方でも使用することができます。

ミレーナとは?

ミレーナは子宮内に挿入し装着する避妊具として、日本では2007年に発売されました。
ミレーナからは、緊急避妊薬の成分としても使用されている女性ホルモン「レボノルゲストレル」が約5年間持続的に放出され、維持することができ、高い避妊効果が発揮されます。

ミレーナの本体はT字型の形状をしており、大きさは約32mmの柔らかいプラスチックでできています。
以前はリング状だったため、「避妊リング」と呼ばれることもあります。

ピルのように血栓症のリスクを高めることも、飲み忘れのリスクもなく、もし妊娠の希望があればミレーナを抜けば挿入前の状態に戻り、妊娠することが可能です。
ミレーナの使用によって日常生活が制限されることはなく、性交に影響を与えることもありません。

また、高い避妊効果の他には、過多月経や月経痛に悩む方への解決法の選択肢の一つにもなり、避妊目的の場合は全額自費負担となりますが、2014年9月からは「過多月経」、2014年11月から「月経困難症」の治療薬として保険適用がされるようになりました。

ミレーナの仕組み

ミレーナはレボノルゲストレルの効果により、子宮内膜の増殖が抑えられて薄くなり、受精卵の着床を妨げるとともに、子宮の入り口の粘液を変性させ、精子が子宮内に侵入するのを防ぐため、高い避妊効果があります。

使用開始後1年以内に妊娠する確率は、日本で最も一般的な避妊方法であるコンドームの2%、低用量ピルの0.3%に対し、ミレーナは0.2%と最も低い確率とされています。

ミレーナが避妊以外にも効果があることは前述していますが、子宮内膜が薄くなることによって、月経の血量が減少し、月経痛の症状なども軽減されるという仕組みになっています。
また、ミレーナを装着すると黄体ホルモンが子宮内に維持されるため、年齢を重ねて更年期周辺の時期に起きる不快な「更年期障害」の症状緩和にも効果的です。

ミレーナとピルの違いについて

ピルの場合は薬が全身に作用し、排卵自体が起こりません。
30代後半~40代以上、BMIが30以上、または喫煙者である場合、血栓症のリスクが高いため注意が必要で、他の内服薬との併用も慎重にしなければなりません。

一方でミレーナの場合、成分が子宮にのみ作用し、卵巣の働きには影響せず排卵は起こります。
喫煙習慣がある人や、他の薬を服薬していても気にせずに使用可能で、体調に影響を与えにくく、最長5年間使用できるため、トータルコストが安く済みます。

ミレーナの使用がおすすめの方は?

ミレーナの使用をおすすめする方は以下の通りです。

・月経困難症、過多月経の改善をしたい
・低用量ピルを服用できない
・コンドーム以外の避妊法を探している
・経腟分娩を経験している
・現在妊娠を希望していない
・次の出産まで長い期間待ちたい

ミレーナを装着するまでとその方法について

1.カウンセリング

まず、ミレーナ装着の可否を判断するために、医師による診察、性感染症検査、超音波検査などを行い、適応があれば施術に進みます
ただし、産後の場合は子宮の回復を待って挿入するため、産後3~4ヶ月が目安です。

2.処置

基本的には月経初日を処置の初日と数えて10日以内で、月経血の量が少なくなると予想される4~7日目か、月経終了前後にミレーナを装着します。
内診台で子宮の入り口から挿入し、処置は数分程度しかかかりません。
ただ、出産経験のない人は子宮頸管の拡張が必要な場合があります。

挿入当日は湯船につからず、シャワーのみで入浴し、感染予防のための抗生物質が処方されることもありますので、その場合はしっかり飲み切るように服用してください。
また、ミレーナの交換に使用する糸は、子宮口にあるため、直接は見えませんし、手に触れることはありません。

3.定期検診

ミレーナ挿入後は定期検診を受ける必要があります。
稀にミレーナが脱落することがあるため、定期的にミレーナの位置を確認します。(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年ごとが多い)
装着した後は、子宮頸がん検診とあわせて年に1回は位置を確認する必要があり、状況によっては年に1回よりも回数が増えることもあります。

ミレーナのメリット・デメリット

ミレーナを使用するメリットとデメリットは下記の通りです。

メリット

・月経量が減少し、月経痛が緩和される
・効果が最大5年持続する
・1年以上使用すれば、ピルによる避妊より安価になる
・コンドームの破損など、避妊の失敗がない
・ピルのような飲み忘れの失敗がない
・ピルを服用できない方でも使用可能
・取り外せば妊娠することも可能

デメリット

・定期的な検診が必要
・出産経験のない方は子宮頸管の拡張が必要な場合がある
・5年が近づくにつれ効果が低下する可能性がある
・腹痛や背中の痛みが起きる場合がある
・月経の出血日数が長くなることがある
・一時的な卵巣の腫れが起きることがある
・その他、少しでも異変を感じたらすぐに病院に連絡をし、受診しましょう
・性病を予防することはできない

メリットとデメリットを把握した上で活用を

このように使用するメリットが多いミレーナですが、デメリットもきちんと把握した上で装着するかどうかを決めましょう。

ミレーナの装着後には数日間にわたって出血、下腹部痛、腰痛が起きることがあります。
おりものの色、量、においの変化などの症状が出ることもあるため、症状がひどい場合や長引く場合は、医師に相談してください。

また、急に出血や痛みが強くなった場合は、ミレーナの位置がずれたり、脱落したり、外れたりしている可能性が高いため、そのような症状が出た場合も早急に受診するようにしてくださいね。

当院でも、ミレーナに関するアドバイス・指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。