産後の膀胱炎 なりやすい原因と予防対策を知ろう

2021.02.02

産後は出産の疲れから様々な体の不調が現れやすく、なかでも頻尿や残尿感といった尿関連のお悩みを抱える方は多いものです。
さらに、産後は膀胱炎になりやすいという医学的な理由がある上、膀胱炎が進行すると高熱が出る腎盂腎炎へと発展してしまう恐れがあるため注意が必要です。

産後の頻尿や残尿感は膀胱炎が原因であることも

妊娠中は大きくなった子宮が膀胱を圧迫するのに加え、女性ホルモンが膀胱筋を緩めるため、頻尿や尿漏れといった尿関連のトラブルを経験する方は一定数いらっしゃいます。
しかし、出産後に頻尿や残尿感のほか、次のような症状が現れた場合は尿路感染によって膀胱粘膜に炎症が起きる膀胱炎の可能性が疑われます。

排尿痛

膀胱炎になると、排尿の際に尿道あたりにツーンとした痛みを感じるときがあります。また、このときの排尿は少量であることが多くみられます。

尿が白く濁る・血が混じる

膀胱炎になると、白く濁った尿が出ることがあります。これは膀胱内の細菌を追い出すために白血球が混じるからであり、体が細菌と戦っている証拠ともいえますね。
また、膀胱粘膜が炎症で傷つくため、出血して尿に血が混じることもあります。

産後は膀胱炎になりやすくなる理由とは?

元々、女性は男性と比べて尿道が短いので細菌が膀胱まで達しやすく、「女性は一生に一度は膀胱炎を経験する」といわれるのはそのためです。
そしてさらに、産後は次のような理由から今まで以上に膀胱炎になりやすくなってしまうのです。

悪露でデリケートゾーンが不衛生になりがち

出産後は子宮内の分泌物である悪露(おろ)が数日~数週間かけて子宮から排出されます。そのためデリケートゾーンがこの悪露で汚れやすく、細菌が尿道に侵入しやすくなります。
また、出産時に会陰を切開した場合も同様で、血液や創部からの浸出液などで尿道周辺が不衛生になりがちです。

膀胱筋の緩みによる尿の長時間滞留

妊娠中に大量の女性ホルモンを浴び続けた膀胱は、筋力が緩むため尿がたまりやすくなります。そうすると膀胱内に尿が滞留する時間が長くなり、微量だった尿内の細菌が繁殖しやすくなる悪循環が生じます。

尿道カテーテル挿入時の傷から細菌が侵入

分娩の際に尿意で分娩進行が妨げられないよう、尿道にカテーテルが挿入されることがありますが、この際に尿道の粘膜が傷ついて細菌が侵入してしまうことがあります。

育児の忙しさでトイレを我慢してしまう

目が離せない新生児の育児でついトイレに行くのを我慢してしまうと、やはり膀胱内に尿が長時間滞留し、細菌が繁殖しやすくなります。

以上のような理由から、産後は女性のライフサイクルの中でも特に膀胱炎になりやすい時期といっても過言ではないでしょう。

産後の膀胱炎を防ぐには?

尿関連のトラブルは育児をする体には大きな負担となり、産褥期からの回復を遅らせてしまう原因にもなります。育児のための体力を残すためにも、「産後は膀胱炎になりやすい」とあらかじめ認識した上で、次に挙げる点に注意して膀胱炎を予防する習慣を身につけましょう。

デリケートゾーンは常に清潔に保つ

前述の通り、産後は悪露でデリケートゾーンが汚れやすくなっているので、悪露を受け止めるナプキンやシートなどはこまめに交換して清潔に保ちましょう。長時間汚れを放置すると細菌が繁殖して膀胱炎を発症する原因となります。
なお、入浴の際はデリケートゾーンに石鹸やボディーソープの泡をつけてゴシゴシと洗う必要はありません。ぬるま湯で外陰部を刺激しないよう、優しくなでるように汚れを落としましょう。

お水をしっかり飲む

毎日しっかりお水を飲みましょう。細菌が増える前に尿と一緒に排出することが大切なので、こまめな水分補給がポイントなのです。

トイレを我慢しない

育児に忙しいと、どうしてもお母さん自身のことを後回しにしてしまいがちですが、膀胱炎を防ぐためにはこまめな排尿が重要です。
トイレに行く時間を見つけたら「もう少し我慢できる」などと思わず、可能な限り排尿するように心がけましょう。

トイレの後は前から後ろに向かって拭く

大腸菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が尿道に入らないよう、トイレの後は排尿・排便のどちらの場合であっても前から後ろに向かって拭くようにしましょう。

できる限り体を休ませる

育児には休みがありませんが、少しでも空き時間を見つけた際はなるべく体を休ませるようにしましょう。寝不足は体力と抵抗力を弱めてしまう原因となるので、赤ちゃんを預かってもらえる機会がある場合はこのときにしっかり眠るのも得策です。

高熱や腰・背中の痛みが出た場合はすぐに受診を

膀胱炎らしい症状が出始めたときは早めに医師に相談するのが望ましいですが、症状が軽微であれば薬局で購入できる一般市販薬や漢方薬で対処できることもあります。

しかし、38度以上の高熱や腰・背中の痛みも現れた場合は、腎盂と腎臓に炎症が起きる腎盂腎炎を発症している可能性が高いため、早急に病院を受診しましょう。
腎盂腎炎の治療には抗生剤の投与または服用が必要であり、自然治癒することはありません。放置していると重篤化する恐れがあるため注意が必要です。

産後のお母さんをサポートする体制づくりを

人の体には細菌と戦う働きが備わっていますが、疲労やストレスが重なると抵抗力が落ちて膀胱炎になりやすくなってしまいます。お母さんの心身を極度の疲労とストレスから守るためにも、出産前からお母さんをサポートする体制を家庭内で考えておくと良いでしょう。
しかし、それでも産後に体調不良が続き、育児や日常生活に支障が出るようであれば無理をせず、医師の診察を受けましょう。

当院でも、産後の体調不良に関するアドバイスや指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。