産後うつの症状と妊娠中からできる対策とは?

2021.05.13

産後にお母さんの心身が疲弊する「産後うつ」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
核家族化や高齢出産の増加、産後も就労する女性の増加などにより子育て世代の負担がますます増える中、赤ちゃんを健やかに育てていくためには育児にかかわる方はもちろん、社会全体が産後うつについての理解を深めなくてはなりません。

そのためにはまず、産後うつの発症時期や症状、原因、対策を知っておく必要があります。

出産経験者の10%にみられる「産後うつ」とは?

産後うつとは、出産後に気分の落ち込みや不安、悲しみといったマイナスの精神状態に陥ってしまうことをいい、産後のみならず妊娠中から症状が出始める方もいらっしゃいます。

育児には悩みと戸惑いがつきものですが、ここに産後の肉体疲労や家事、仕事復帰への準備などが重なるのですから、産後うつはある意味、様々な負担が積み重なった結果「なるべくしてなる病」と言っても過言ではないでしょう。
つまり、産後うつは育児に携わる方であれば誰でもなってしまう可能性がある精神疾患で、決して「甘え」などではないのです。

産後うつでよく見られる症状

妊娠中や出産直後は育児への不安から暗い気持ちになる方がいらっしゃいますが、その多くはいわゆる「マタニティーブルー」と呼ばれる一時的なもので、個人差はありますが出産後10日間前後でおさまります。
しかし、産後うつは以下のような症状が2週間以上続くため、出産後しばらく経っても前向きな気持ちになれない場合は注意が必要です。

悲しみや絶望感が続く

このような精神的な落ち込みは産後うつの代表的な症状の一つです。
かわいい赤ちゃんを見ても育児に前向きになれず、「母親失格だ」という自己嫌悪にさいなまれて一層落ち込む悪循環が続いてしまうのもよくみられるパターンです。

摂食障害

精神的に不安定な状態になると、それは食事にも現れます。
食欲の大幅な減退や過食はその一例で、さらにストレスが増強する原因になってしまいます。

極度の疲労感

産後は誰でもある程度の疲労が残りますが、産後うつの場合は「何をするのも面倒」「何もしたくない」といったように、日常生活に支障が出るほどの極度な疲労感に襲われることがあります。

産後うつの原因と妊娠中からできる対策

産後うつの原因には産後のホルモンバランスの変化、育児への不安、周囲のサポート不足、パートナーや親戚との関係の悪化、2人目出産で赤ちゃんと上の子の育児が重なったことによる疲労などが挙げられますが、どれもお母さんが抱えてしまう心身の負担が発端となっていることがわかります。

したがって、産後うつを予防するにはお母さんの負担を少しでも軽くする対策を考えておき、将来を心配し過ぎない精神状態に持っていくことが大切なのです。
たとえば、次のようなことは妊娠中から取り組めますし、パートナーとの絆を深める機会にもなります。

産後うつは誰でもなる可能性があると認識しておく

前述の通り、産後うつは誰でもなる可能性があります。
この点をお母さん自身が改めて認識しておくだけでも自分を不必要に追い詰めずに済みますし、外部からのサポートを受け入れやすくなります。

パートナーにも産後うつについて知ってもらう

産後うつになる可能性や症状、万が一のときに必要になるサポートの内容などをパートナーにも事前に知っておいてもらいましょう。
最近は積極的に育児に参加する男性が増えていますが、それと同時に育児疲れによる男性の産後うつも多く報告されており、パートナーにとっても他人事ではありません。

相談できる人や窓口、サービスを確認しておく

産後しばらく時間が経っているにもかかわらず、気分の落ち込みが続く場合は産後うつになっている可能性があります。このようなときは「疲れているせい」などと自己判断せず、乳児検診の担当医師や新生児訪問をしてくれる保健師に早めに相談しましょう。

また、妊娠中から各自治体の相談窓口やベビーシッター、ドゥーラ(産後のお母さんを全般的に支援してくれる女性サポーター)のサービスについて調べておくのも良い対策です。「万が一のときはこういうサービスを使おう」と思えば気が楽になります。

産後うつは治療可能 大切なのはヘルプのサインを出すこと

産後うつは放置しておくとお母さん自身がもっとつらくなってしまいますし、赤ちゃんやパートナーの精神状態にも少なからず影響を及ぼしてしまうため、早期にカウンセリングや処方薬による治療を開始することが大切です。
もし、産後につらい状態が続くようであれば無理をせず、周囲にそのことを伝えてサポートをお願いしましょう。

当院でも、産後の体調に関するアドバイス・指導を行なっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。